第25章 情
※野薔薇視点
この状況で、伏黒に好きな女のタイプ聞くなんて、酷なことするなぁって。
あくまで他人事みたいに思ってたんだけど。
「その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
そう口にする伏黒が、あまりにも凛々しい顔をしてたから、不覚にも思わず見惚れた。
その気持ちを向けている相手が誰かなんて、わざわざ聞かなくても分かるから。
皆実のことを想う伏黒の顔は、そんな顔なんだって。
(五条よりコッチでしょ、皆実)
趣味の悪い皆実に、今のこの伏黒を見せてあげたかった。
あんなヘラヘラした大人より、絶対伏黒の方がアンタを幸せにするよって。
今さら届きはしない言葉を、心の中で皆実に送る。
「悪くない答えね。巨乳好きとかぬかしてたら皆実の代わりに私が殺してたわ」
「うるせぇ」
心の底から褒めてやったのに、伏黒の返答は可愛げない。
皆実以外に対してはこの態度だから、私が伏黒を好きになることは100ないけど。
だからこそ、たった一人を明確に大事にする伏黒が男らしく思えた。
少なくとも。
「やっぱりだ」
不服そうに呟く、このパイナップル野郎よりも遥かに、伏黒はイイ男だ。
コイツの趣味はマジで最悪。女の敵だ。
でも、ため息を吐いたパイナップルの声が低く鳴り響いて。
「退屈だよ、伏黒」
強力な呪力でもって、伏黒を殴り飛ばした。
「伏黒!」
慌てて伏黒の加勢に向かおうとしたら、ノシッと背中に体重がかかった。