第25章 情
別にこんなくだらない話をしたいわけじゃないけど。
でも、今はそれをしなきゃいけない状況だから。
俺は、頭の中にその姿を思い描く。
『人を許せないのは悪いことじゃないよ。それも恵の優しさでしょう?』
もしも好きになるなら、津美紀のような人間だと思ってた。
でもそれだって、俺の身近にいた模範の女性が津美紀だったからで。
「別に好みとかありませんよ」
実際に想いを寄せたのは――。
『伏黒くん』
津美紀とは、全然違うヤツだった。
『ごめんね、伏黒くん』
どんなに俺が手を伸ばしても。
俺じゃない人を選ぶようなヤツだった。
「その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
アイツの顔が綺麗とか、見た目の話は全部、後から上乗せされた感情だ。
俺がアイツに感情を揺らされた理由なんて、アイツの人間性以外にない。
「悪くない答えね。巨乳好きとかぬかしてたら皆実の代わりに私が殺してたわ」
「うるせぇ」
俺の回答を、なぜか釘崎が誇らしげに聞いていた。
つーか、俺が名前出してないんだからその名前を出すなよ。少しは気を遣え。
「やっぱりだ」
でも俺の答えを聞いた、パイナップルの声が低く鳴り響く。
「退屈だよ、伏黒」
瞬間、強力な呪力が俺のことを殴り飛ばした。