第25章 情
全く興味ない情報を告げられて、俺は困惑するしかない。
「なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか」
「そうよ、ムッツリにはハードル高いわよ。ちなみに伏黒は面食い」
俺のことを指して、釘崎が余計なことを言ってくる。
マジで余計だ。
「オマエは黙ってろ。ただでさえ意味分かんねー状況が余計にややこしくなる」
「あ゛? 具体例言ってやろうか?」
「いいから、黙ってろ」
具体例ってなんだよ。
俺は別に、顔で人を選んじゃいねぇよ。
釘崎の適当な発言にイラついていると、目の前のパイナップルが面倒そうに口を開いた。
「京都三年、東堂葵。自己紹介終わり。これでお友達だな。早く答えろ、男でもいいぞ」
なんでそうまでして話さなきゃいけないんだよ。
自己紹介なんだったら別に趣味特技とかでいいだろ。
別にそれも興味ないけど。
そんな俺の疑問を知ってか知らずか、パイナップルが理知的な言葉遣いで説明してくる。
「性癖にはソイツの全てが反映される。女の趣味がつまらん奴はソイツ自身もつまらん。俺はつまらん男が大嫌いだ」
ただの自己中心的な発言。
要するに、自分と意見が合う人間かそうでない人間かを知りたいだけだろ。
「交流会は血湧き肉躍る俺の魂の独壇場。最後の交流会で退屈なんてさせられたら何しでかすか分からんからな。俺なりの優しさだ。今なら半殺しで済む」
自分のことばかり話して、パイナップルが俺を睨む。
(殺すことは前提かよ)
自信満々な態度が、ムカついた。
「答えろ、伏黒。どんな女がタイプだ」
この空気、下手なことを言えば、マジで戦闘に持ち込まれる。
このパイナップルは場所も考えずに、暴走しかねない。
釘崎は丸腰だ。揉め事は避けたい……。