第25章 情
「いいのよ。言いづらいことってあるわよね。代わりに言ってあげる」
そうして真依さんは、やっと折り合いをつけた話を、俺たちの前で掘り返す。
「『器』なんて聞こえはいいけど、要は半分呪いの化物でしょ」
真依さんが口にするのは、綾瀬と虎杖のこと。
「そんな穢らわしい人外が、それも2人も、隣で不躾に『呪術師』を名乗って。虫酸が走っていたのよね?」
悪意のある声で紡がれる言葉が、俺と釘崎の感情を逆撫でする。
「死んでせいせいしたんじゃない?」
釘崎はその言葉を受け流すように、他所を見ている。
でもその拳は白くなるくらいに、握り締められていた。
(釘崎が堪えてんだ)
俺が無闇に手を出すわけにはいかない。下手すれば釘崎も巻き込む。
ギリっと唇を噛んだ俺を、その隣の声が冷静にした。
「真依。どうでもいい話を広げるな」
パイナップル男が真依さんを後ろに下げて、前に出てくる。
「俺はただコイツらが乙骨の代わり足りうるのか、それが知りたい」
俺の前に立ち塞がって、ソイツが俺に問いかけた。
「伏黒……とか言ったか。どんな女がタイプだ」
タイプの、女……?
(コイツ、何言ってんだ?)
意味の分からない質問に、俺が首を傾げていると、男は何を思ったのか、自分のTシャツをビリビリと破いていった。
「返答次第では今ココで半殺しにして、乙骨……最低でも三年は交流会に引っ張り出す」
破いた服を脱ぎ捨て、鍛え上げられた肉体を晒す。
殺気をプンプンに漂わせて、パイナップル頭が告げた。
「因みに俺は、身長と尻がデカイ女がタイプです」