第25章 情
※伏黒視点
あれから数日経った。
毎日続く先輩たちとの稽古の最中、俺のことを棒1本で投げ飛ばした禪院先輩がジュースを買ってこいと俺たちをパシリにした。
「自販機、もうちょい増やしてくんないかしら」
人数分のジュースを購入しながら、釘崎が小さく愚痴る。
釘崎もさっきまでパンダ先輩に散々投げられていた。
「無理だろ。入れる業者も限られてるしな」
そう口にして、俺は黙る。
高専は限られた人しか入れない。
ちゃんと登録されていない呪力が発生すれば、即座にアラートが鳴って危険を知らせてくれる。
だから、今感じてる、俺たち以外の呪力の気配が身内のものだってことくらいは、容易に分かること。
「あら、伏黒君じゃない。久しぶりね」
振り返ると、2人の人影。内、1人は知ってる姿だった。
「なんで東京いるんですか、禪院先輩」
俺がそう告げると、釘崎が納得したように声を上げる。
「あっ、やっぱり? 雰囲気近いわよね。姉妹?」
「嫌だなぁ、伏黒君。それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで」
禪院先輩……真希さんの双子の妹が、片目を閉じて俺に話しかけてくる。
双子だし、雰囲気も似てるけど。
真希さんと比べると、真依さんは女性らしさが強い。
(隣にいるヤツは……誰だ)
真依さんの隣にいるってことは、京都校の人間。
でも一年の俺は、親戚や御三家以外の姉妹校の人間の顔は把握していない。
「コイツらが乙骨と三年の代打……ね」
パイナップル頭の男が俺たちを値踏みするように呟いた。
「アナタ達が心配で学長に着いて来ちゃった」
微塵も思っていないだろう感情を口にして、真依さんが笑っている。
「同級生が死んだんでしょう? 辛かった? それともそうでもなかった?」
「……何が言いたいんですか?」
回りくどい言い方は苦手で、本音を促したら、真依さんがニヤリと笑った。