第25章 情
泣き疲れて、五条先生が戻ってくるのも待てずに、私は眠りについた。
でもそれは、誰に向けたわけでもない、自分に対する言い訳で。
今は五条先生と顔を合わせたくなかった、っていうのが本音だった。
眠りの底、真っ暗な闇には何もない。
でもその刹那、そこに眩しい光が落ちてきて。
「皆実……」
その光が、求めた声を再現する。
大好きな声が、私の名前を紡いだ。
でもきっと、それは私の夢が描いた、都合のいい空想。
愛しい声が私の名前を呼んで、大好きな温もりが私を包む。
触れた愛しい感触。甘い味。
それを感じたら、重たい体がどんどん軽くなっていった。
私の体を廻る数多の呪いを奪って、その代わりに愛しい呪いが流れてくる。
「バカ皆実……こんなに呪いを溜めて、僕以外の誰に流すつもりだったんだよ」
温もりが離れていく。
体が冷えていくのを感じて。
「……ほんと、バカだね。オマエは」
目を覚ましたら、五条先生は隣にいなかった。