第25章 情
五条先生の顔に私の涙が落ちていく。
泣くに決まってるじゃん、バカ。
真実を知るのが、怖いんだよ。
五条先生が私にくれる優しさが、私の呪いに当てられて作られた感情だなんて、知りたくないんだよ。
「キスができない私は……いりませんか?」
キスも交わりも、五条先生を呪う全てを断ち切っても、一緒にいてくれるって。
そう、言ってほしいの。
呪われた私じゃなくて、ただの私に……そばにいてほしいって。
でも、ただの私じゃ……五条先生のそばにいる理由がないことも、ちゃんと分かってるよ。
「……頭冷やせ、バカ」
五条先生が私のことを押し退ける。
五条先生の答えは、『拒絶』。
(分かってたよ)
分かってたから、キスも何も、できなかった。
逃げたくせに、結局答えを急いで。
自分で聞いておいて、やっぱりバカだよ、私。
「……僕も、頭冷やしてくる」
五条先生が部屋を出て行く。
パタンと悲しい音が響いて、五条先生の香りを漂わせるベッドの上に私だけが残った。
「五条、先生」
冷やした頭で何を思うの。
私がいらないって、冷静に考えるの?
そんなの……。
「いや、だよ」
感情が壊れて、涙が止まらなかった。