第25章 情
五条先生の料理が出来上がるまで、私は虎杖くんと地下室で、訓練をすることにした。
虎杖くんはこの短時間の訓練の間に、もう黒クマを起こすこともなくなっていて。
対する私は、定期的に虎杖くんの呪力で白クマを起こしてもらっていた。
「皆実、隣座って。その方が眠ってもすぐに気づいて、呪力あげられるし」
あまりに虎杖くんに呪力で起こしてもらう回数が多いから、虎杖くんの隣に座らされた。
「ごめんね、虎杖くん。映画の邪魔でしょ?」
「いいよ。『同時にいろんなことしてても呪力は一定』っていう練習になるし」
虎杖くんは優しく笑ってくれる。
でもやっぱり申し訳なくて。
私が眉を下げたら、虎杖くんが私の頭に触れた。
「こんくらいさせてよ、皆実」
「……虎杖くん」
虎杖くんのまっすぐな瞳が私の瞳を見つめる。
静かな空気に、映画のBGM。
白と黒のクマが寝息を立てる音だけが木霊して。
「もっと俺を頼ってよ。頼りになるかは分からんけど」
五条先生からもらいたかった言葉を、虎杖くんがくれる。
また感情が揺れて、泣きそうになったら。
「ね、2人は卵焼きと目玉焼きどっちがいいー?」
キッチンに向かったはずの五条先生が階下に飛び降りて、割り込むようにそう尋ねた。
目隠しをサングラスに変えた五条先生が、サングラスを少しずらして私を見つめる。
「ああ、お邪魔だった?」
虎杖くんと向かい合ってソファーに座る私を見て、五条先生がわざとらしくそう言った。