第25章 情
あの後、私は五条先生に連れられて家入さんの診察を受けに行った。
ちょうどいいからと、虎杖くんも一緒に診察を受けて。
その間に学長に会いに行った五条先生が伊地知さんの車で戻ってきて、また3人で五条先生の家に帰ってきた。
「よし、じゃあ夕飯食べようか」
地下室にたどり着いて。
一連の出来事なんて、まるで何もなかったみたいな、いつもの調子で五条先生が言った。
夕飯と聞き、当然私が作るものだと思って立ち上がったら、五条先生に止められる。
「悠仁もいるから、皆実は作らなくていいよ」
「え?」
驚いて、私が小さく声をあげると、虎杖くんがブーブーと後ろで抗議を始めた。
「先生、俺も皆実の料理食べてみたい!」
「んー? ダメ」
はっきりと拒否を示して、五条先生はいつもみたいにケラケラ笑った。
「皆実の料理はやめといた方がいいよ、悠仁。創意工夫をこらした、トンデモ料理だから」
いや、そこまでひどくない。
一応一般的にある料理しか作ったことないはずだけど。
「悠仁も成長期だからね。今日は僕が元気の出る料理を作ってあげる。あ、でも明日からは悠仁が作ってみてよ。料理、できるんだろ?」
五条先生が思いついたように、そう告げる。
五条先生の提案に虎杖くんはやっぱり首を傾げた。
「いいけど。だったら、皆実も作ればいいじゃん。3人ローテーションで」
「ダメ」
「えー……」
あんなに私に料理をさせ続けた五条先生が、頑なにそれを拒否した。
そんなに他人に食べさせられない料理だったっけ?
めちゃくちゃ美味しいってわけじゃなかったけど、私は普通に食べれてたし。
一応五条先生も、全部食べてくれてた。
(無理して、食べてたのかな)
嫌な考えばかりが、頭を支配する。
五条先生の顔を見上げたら、五条先生は私のことを見ずに、階段を上ってキッチンに消えていった。
「皆実って、そんなに料理下手なの?」
「上手では、ないけど」
呟くように言って、私は白クマを見つめた。