第23章 雨後③
「……皆実」
五条先生が私の背中に腕を回す。
でも抱きしめる直前、五条先生の腕が少しだけ強張った。
「――――皆実……オマエ」
動揺したような声。
目隠しの下、五条先生の瞳の色は私には見えなくて。
「……バカ」
言いかけた言葉ごと、全部かき消すように、五条先生が私のことを抱きしめた。
「……マジで、バカ。……何やってんだよ、バカ皆実」
何回バカって言うのって、文句言いたいのに。
五条先生がくれるから、侮辱の言葉も愛しく聞こえるの。
「絶対……許さないからな」
五条先生の、震える声が刺さって、ギュッと抱きしめられる身体が痛いのに。
この痛みをどうしても抱きしめていたくて。
黒布に隠れた五条先生の瞳が、今の私をどんなふうに映しているのか、分からないけれど。
それでも今は、五条先生がくれる「いつも通り」を噛み締めていたくて。
「ごじょ、う……せんせ」
懸命に言葉を紡いだ。