第23章 雨後③
「あい、たかった……です」
嘘偽りない本音を、口にする。
何を引き換えにしても、五条先生に逢いたかった。
逢ったら余計に、逢いたかった気持ちを実感したの。
もっとずっと、五条先生のそばにいたいって。
「ごめ、なさい」
裏切ったことも、後悔しないって。
心に誓った。
生き返って、やっぱり後悔はしなかった。
でも……苦しいよ。
「ごめん、なさい」
勝手に死んじゃって、ごめんなさい。
心配かけて、ごめんなさい。
五条先生を、裏切って。
「ほんと、に……ごめんなさい」
どんどん声が清らかに鳴っていく。
でも音になる言葉は、悲しい言葉ばかりで。
もっと言いたいことはいっぱいあったはずなのに。
頭に浮かぶのは、どうしても……五条先生を裏切った事実で。
何度も謝る私を黙らせるみたいに、五条先生の腕が私の身体をきつく抱きしめた。
「……もう、謝るな」
呪いまみれの私には、もったいないくらいの優しい声。
その声で紡がれる言葉が、私以外に向けられるのなんて、やっぱり嫌なの。
「……皆実」
五条先生に逢えたことがこんなにも嬉しいのに、こんなにも辛い。
「おかえり」
その言葉を聞きたかったのに。
聞いてしまったら、涙が止まらないの。
「五条、先生」
溢れた涙と一緒に、裏切りの記憶も全部、流れてしまえばいいのに。
辛い感情ごと全部、消えてしまえばいいのに。
「……ただいま」
抱きしめ返した私の腕は、嘘と涙で汚れてた。