第23章 雨後③
苦しいほどに私を抱きしめていた宿儺の手が、ゆっくりと離れる。
私のことを手放して、そのまますぐに宿儺が私の身体の向きを変えた。
「や……っ、ちょ、っと」
宿儺の膝の上、宿儺の身体に背を預ける形で座らされて。
何事かを理解できない私に、宿儺が耳打ちをする。
《小僧が目を覚ました》
私の身体を背後から抱きしめて、宿儺が呟いた。
反射的に、下で眠ってるはずの虎杖くんを確認したら……。
「……っ、虎杖くん!」
水面の上に虎杖くんが立っていた。
私の声に気づいて、虎杖くんが私を見上げる。
でも、私の姿を確認した虎杖くんの顔が急激に赤く染まった。
「……皆実っ……その、格好……っ」
言われてすぐに、自分がどういう姿なのかを思い出した。
はだけてしまった制服を引っ張って、慌てて前を隠すと、背後の宿儺が鼻で笑った。
《俺と契りを結んだ身体、小僧にも見せてやればよいのに》
そう口にして、宿儺が耳元で笑う。
《次にオマエを抱くのは……正真正銘、小僧の身体なのだぞ?》
わざわざ言わなくていいことを……。
文句を言おうと振り返ったら、そのまま唇を奪われた。
「宿儺……っ! テメェ、皆実に触んな!」
虎杖くんの声が下から飛んでくる。
こんな姿、見ないでほしいのに。
私を心配する声が苦しくて。
表情を歪ませた私を、宿儺がまた愉しげに見つめる。
そしてその視線を、そのまま屍の下にいる虎杖くんへ向けた。