第21章 雨後
私の肉体は、致死レベルの失血に加えて、機能を失うほどの刺傷も伴っている。
魂の抜け落ちた肉体は、魂より先に死を迎えた。
《魂が解放されたところで、肉体が朽ちていればそこに戻ることはできない、と》
宿儺は私の言葉を解釈して呟く。
そう。
だから虎杖くんの魂が死んでしまう時、私の魂は帰る場所をなくして消滅する。
「でも私と違って、虎杖くんは生き返ることができますよね」
反転術式という、なんでもなおしを使えば虎杖くんは生き返ることができるはず。
私には術式が効かないから、それは期待できない。
もしも虎杖くんが生き返ったのならば、術式は解除されず。
私はずっと虎杖くんの魂と同化したまま。
虎杖くんの魂の世界に閉じ込められる。
虎杖くんが生き返ったとしても、死んでしまったとしても。
私が現実に戻ることはできない。
あるのは〝死〟か〝魂の監禁〟か。
それが〝自分を生贄にする〟高等術式の代償。
《小僧を、生き返らせる……か》
宿儺は私の言葉に反応して、繰り返すように呟く。そして……。
《まず、無理な話だ》
私の考えを鼻で笑った。
《致命傷を受けても魂が肉体から抜け落ちていなければ反転術式も使えないことはない。が、それとて相当の呪力操作の腕を持たねば不可能だ。加えて、今の小僧は魂が抜けて身体は朽ちている。その身体を治し魂を返すのは〝蘇生〟の領域。通常の反転術式の範疇を超えている》
呪いの限界を口にして、宿儺は告げる。
《小僧もオマエも……そしてこの俺も、死を待つのみ》