第21章 雨後
ケヒッと、宿儺の笑い声が木霊する。
不気味な笑い声に私の身体を冷や汗が伝う。
「どういう、意味ですか」
《まあ、そう答えを急くな。たまには会話というものを楽しんでみようではないか》
宿儺は楽しげに言葉を紡ぐ。その言動すら不可解でならない。
《このまま何もしなければ、まず間違いなくオマエは死ぬ》
そんなこと、言われなくても分かってる。
生き返るなんて想像は最初からしてない。
それなのに、宿儺は含みをもたせた言葉を紡いでくる。
《オマエの術式で、オマエの魂と小僧の魂が同化した。だが元より小僧の魂と俺の魂も導線で結ばれている》
それも、分かっていた。
虎杖くんの魂と宿儺の魂は同一個体の肉体を媒介して、魂同士が強固に結ばれている。
《つまり今、オマエと小僧、そしてこの俺の魂が同じ導線で結ばれている。そしてこの導線の中心にいるのが小僧だ》
宿儺は冷静かつ的確に、私の術式に対する答え合わせを始めた。
《オマエの術式……導線を結んだ魂を殺せば、解けるようになっているのだろう?》
流呪操術の高等術式――術式流転により発動する【玉響】の発動条件は、生命維持の最低限界を超えた失血。
体内に残ったごく少量の血液に対象の呪力を循環させて濃縮する。それによって対象の魂と私の魂が同一の呪力で導線を結び同化可能となる。
そしてこの術式は、同化した魂が失われるのと同時に導線が切れて解除される。
「でも解けたところで、生き返れるわけじゃありません」