第21章 雨後
自分を生贄にすることで解放される同化の式。
皆実の身体に残る残穢は、その術式を解放したことを僕に教えた。
傑の死を予測できていたなら、おそらく皆実は傑の死の直前にこの術式を使っていただろう。
傑が死んで傑の呪力が消えたから、それを使えなかっただけのこと。
傑が死んだ今、その術式の使い道はもうないと思っていた。
思っていたけど不安だった。
もしも必要が迫れば、皆実はその術式を躊躇なく使うと思ったから。
(だから、皆実に術式を使うことを覚えさせたくなかったんだ)
でも今は、それも間違いだったんだと思う。
本当は、もっとちゃんと皆実に術式の使い方を教えるべきだった。
ままならない体術なんて気休めを与えるんじゃなくて、戦うための術式を教えてあげるべきだったんだ。
全部、僕が間違ってた。
認めるよ。謝るよ。
もう一度、ちゃんと[先生]をやり直すから。
だから目を覚ましてくれよって。
叶わない願いが頭をよぎっては消えていく。
「……皆実」
その名を呼んで、また唇を噛んだ。
僕の耳に硝子の声が聞こえてくる。
「ちょっと君達、もう始めるけど」
手袋をつけた硝子が、僕たちを見ていた。