第15章 自分のために⑤
真希先輩と私の会話が途切れたのを見計らって、今度はパンダ先輩が口を開いた。
『なぁなぁ、皆実。宿儺の器が同級生になったってマジ? どんなヤツ?』
パンダ先輩は興味津々に聞いてくる。
真希先輩も『あ、それ私も聞きたかった』と笑った。
普通は怖がりそうなものだけど、やっぱり真希先輩とパンダ先輩はすごい。
顔に『面白そうじゃん』と書いてる。
「すっごくいい人ですよ。コミュ力も高くて、優しいし」
『なんだ、器感ゼロだな。想像してたのと違う』
つまんないの、とでも言いたげにパンダ先輩がしょぼんと肩を落とす。
けれどすぐにパンダ先輩は話を戻した。
『で、明日はもう1人一年来るんだっけ?』
「はい、そうみたいです」
『イジメられたら言えよ? シメてやるから』
どこぞのガキ大将張りの発言をして、真希先輩は笑ってる。
真希先輩のことだから本当にやりかねない。
そんなことを話してたら真希先輩の隣にもう1人の人影が現れた。
『こんぶ』
「こんばんは、狗巻先輩」
私にひらひら手を振って、狗巻先輩は真希先輩とパンダ先輩をジロっと半目で見やった。
『おかか!』
『いや、俺も棘と一緒。悟からの電話だと思ってたんだけどさ、なんか皆実の声がしたから来てみたわけ。そしたら実は皆実からの電話だったんだよ』
『私だってバカからの電話だと思ってたっつーの』
「僕からの電話ってそんなにダメなの?」
五条先生は相変わらず笑ってる。
普通は悲しみそうなものだけど。
狗巻先輩はその後もまた何か2人に文句を言ってた。
でもやっぱり私には狗巻先輩が何を言ってるのか、全然分からなくて。
首を傾げた私と、狗巻先輩の目があった。