第15章 自分のために⑤
私がため息を吐くと、真希先輩の背後に見知った人影……動物影っていうのかな。パンダ先輩が現れた。
『あれ? 皆実だ。ヤッホー』
「こんばんは」
パンダ先輩が真希先輩の隣に来て、私に手を振ってくれた。
私が手を振り返すと、パンダ先輩が真希先輩に耳打ちを始める。
『真希、オマエ悟から電話って言ってなかった?』
『ああ、皆実がスマホ持ってねぇからアイツのスマホからかかってきたんだよ』
『なんだ、そういうことか。逃げて損したな』
「なんで逃げるんだよ、パンダ」
『悟からの電話なんて、ろくな電話じゃないもーん』
パンダ先輩がテヘッと笑った。
その仕草がなんだか、かわいい。
パンダ先輩が来てくれたから、私はもう1人の先輩のことを尋ねる。
「狗巻先輩は不在ですか?」
『棘なら、悟からの電話って聞いて向こう行った』
「ねえみんなひどくない?」
『日頃の行いだろ。……で、どうした? っていうか、オマエは大丈夫なの? 宮城で恵がボコボコにされたってそこのバカから写真送られてきたけど』
(やっぱりあの写真送ったのか)
五条先生に呆れつつ、私は真希先輩の質問に答える。
「はい、私は大丈夫です。それより、突然宮城に行って真希先輩の稽古サボっちゃってごめんなさい」
『あ? 別にいいよ、そんなこと。その代わり、帰ったら稽古3倍な』
「……はい」
私が半目で答えると、後ろで五条先生が吹き出した。