第15章 自分のために⑤
(……そんなことまで、分かっちゃうんだ)
伏黒くんに抱きしめられた私は、少なからず伏黒くんの呪力を吸収していた。
呪術師である伏黒くんの呪力は本来彼の身体を廻るから、私と触れ合わない限り私に吸収されることはない。
でも私が誰の呪力を吸ったかなんて、そんなこと、普通の人にはきっと分からない。
(眼が良すぎるよ、五条先生)
それが分かってしまうなら。
私と伏黒くんのあいだに何かあったことは明白。
五条先生は最初から、それに気付いてた。
「……バカ皆実。ほんと無防備なんだからさ」
五条先生の手が私の背中に回る。
「どうせ漂わせるなら僕の呪力にしといてよ」
私のことをギュッと抱きしめて、五条先生はそう呟いた。
五条先生から流れてくる負の感情は、心配の声。
「五条先生」
「ん?」
「……ごめんなさい」
そう口にして、五条先生の胸に顔を埋める。
私の子どもみたいな仕草を、五条先生がクスクスと笑った。
でも今はその笑いも嫌ではなくて。
「素直でよろしい」
私の頭を撫でる手が、優しくて温かかった。