第15章 自分のために⑤
目を閉じる寸前、見えた五条先生の顔が驚きを露わにしてて、それが嬉しくて。
ゼロの距離をもっと深く求めた。
背中に冷たい感触。
私にキスを返すように、五条先生が私に体重をかけた。
すでに主導権を奪われそうになってるけど。
でもこのキスは私から仕掛けた、私のキス。
「……これで、いいですか?」
五条先生の唇から逃れて、私は尋ねる。
五条先生は腰をかがめてくれてるけど、やっぱりそれでも私の視線より高いところに顔があるから見上げちゃう。
「……どんだけ言いたくないんだよ」
もはや五条先生は呆れてた。
呆れてもう何も言えないって感じで、笑ってた。
「分かった。もう聞かない」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
けれど、そんな私の不意を狙って、五条先生がまた私にキスをした。
ただ触れるだけの、優しいキス。
「聞かないけどさ、皆実」
唇をわずかに触れ合わせて五条先生が告げる。
濡れた唇が擦れるたびに、五条先生の呪力と私の呪力が混ざり合う。
「恵の呪力をぷんぷん漂わせといて、何もないっていうのは……無理があるよ」
五条先生はもう一度私にキスをして、小さく眉を下げた。