第15章 自分のために⑤
「マジでうるさいんですけど……何してるんですか?」
中から出てきたのは少し気だるげな様子の伏黒くん。
虎杖くんと五条先生の姿を見て、伏黒くんはあからさまに顔を歪ませた。
「げ、隣かよ。空室なんて他にいくらでもあったでしょ」
「おっ、伏黒! 今度こそ元気そうだな!!」
虎杖くんが伏黒くんのほうへと駆け寄る。
伏黒くんにめっちゃ懐いてるなぁ。
しみじみとそんなことを思ってたら。
五条先生が私の肩に触れた。
「うんうん、元気そうだね。……いろんな意味で」
ニタァと煽り顔で伏黒くんを見てる。
私何も言ってないんだけど、カマかけてるのかなぁ。
これは伏黒くんキレそう……って、思ったんだけど。
「……ぶん殴りますよ」
伏黒くんが顔を赤くして、そっぽを向いた。
(あー……)
これは、まずい。
五条先生がこっちを見たから、私は反射的に視線をそらした。
「皆実、後でマジ説教」
言葉以上に、背後から湧き起こるなんとも言えない空気に、ゾワァと悪寒が走った。
「伏黒どうした? 顔赤いけど、やっぱまだ体調悪いんじゃね?」
「うるさい。もうどこも悪くねーよ。……それより、なんで虎杖、俺の隣なんですか」
伏黒くんがヤケクソと言わんばかりに声を張って五条先生に尋ねる。
聞かれた五条先生は「なんでそんなこと聞くの?」とでも言いたげに首を傾けた。
「だって賑やかな方がいいでしょ?」
「授業と任務で十分です」
伏黒くんがうんざり顔で答えると、五条先生はニヤリと口角を上げた。
「なに、皆実の隣がよかった?」
「違います」
伏黒くんが勢いよく否定するけど、五条先生は聞いておいて興味なさげに手をパンッと叩いた。
「それなら、まっ! いいっしょ!」
五条先生がニカッとわざとらしく笑う。
伏黒くん、絶対よくねーよって思ってるよ。
死んだ魚の目してるもん。
「それより明日はお出かけだよ!」
私と伏黒くんと虎杖くん。
3人に向かって五条先生が告げる。
「4人目の一年生を迎えに行きます」