第15章 自分のために⑤
伏黒くんの部屋を出て、私は隣の虎杖くんの部屋に向かう。
虎杖くんの部屋をノックしようとしたら、向こうから扉が開いた。
「……遅かったね、皆実。恵が起きてた?」
「寝てたんですけど、さっき起きてくれて、ちょっと喋りました」
五条先生に、伏黒くんの部屋で起きた事件を勘づかれないように。
私は至って冷静な態度を繕った。
対する五条先生は私の姿を見て目を細める。
「ふーん、それで? 恵はまだ部屋?」
「はい。寝起きでまだ気怠そうでした」
我ながら演技派だと思う。
何事もなかったように、でもそれをあくまで誇張せずに自然に。
五条先生は何か言いたげだけど。
丁度よく、救世主が私に声をかけてくれた。
「お、皆実。伏黒との話終わったー?」
「うん。……わぁ、虎杖くんの部屋、すでに賑やかだねー」
チラッと虎杖くんの部屋を覗いてみる。
部屋ってやっぱり個性が出る。
五条先生の部屋はなんてゆーか、綺麗なんだけど雑多で。
伏黒くんの部屋は必要最低限のものしかない質素な部屋だった。
そんな2人の部屋にはないものを、私はマジマジと見つめる。
(……やっぱり虎杖くんって、巨乳好きなんだ)
五条先生の部屋にも、伏黒くんの部屋にもないグラビアのポスター。
写ってる人はやっぱり巨乳だった。
別にそれが嫌とかそういう感情はまったくなかったんだけど。
私の背後からいらない声が飛んだ。