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【呪術廻戦】無下限恋愛

第15章 自分のために⑤


※ 皆実視点


 目を覚ました伏黒くんは、現状を把握するなり飛び上がって、その場に正座した。


「……夢、だよな」


 伏黒くんは自分でそう呟いて、勢いよく自分の顔を殴った。

 ゴッと鈍い音が響いて、私は慌てた。


「ふ、伏黒くん!? 病み上がりなんだから、落ち着いて!」


 私がなだめようとすると、伏黒くんはさらに落ち込んだ。


「痛ぇし……夢じゃないのかよ。……どこからが現実だ」


 伏黒くんが死にそうな顔してる。

 絶望って言葉がこれほどピッタリなことってないと思う。


「ごめんなさい、伏黒くん!」

「……被害者が謝るな」

「ひ、被害者って……私が勝手に部屋に入ったばっかりに」

「部屋入ったヤツ、みんなベッドに引きずり込んでるわけないだろ」


 伏黒くんは大きなため息を吐いて、ベッド上で私に土下座した。


「マジでごめん。……悪気はない、たぶん。いや、アウトか。……ごめん」

「寝ぼけてたって分かってるし、本当に私は大丈夫だから。……もうこの話やめよ?」


 そもそも、こうなるのが嫌だったから伏黒くんを起こそうとしてたんだけど。

 いろいろ失敗してしまって申し訳なかった。


 伏黒くんはもう一度私に「ごめん」と告げると、私に背を向ける。

 そして気まずそうに言った。


「……今いろいろ大丈夫じゃないから。ちょっと部屋の外出てて」

「う、うん」


 伏黒くんの言う『いろいろ』を察して、私は伏黒くんの部屋を出て行こうとしたけど。

 やっぱりこれだけは伝えておきたくて。


「伏黒くん」


 私が名前を呼ぶと、伏黒くんは困り顔で顔だけこっちを振り向いた。その頰がまだ少し紅潮してる。


「五条先生と、仲直りできました」


 伏黒くんにとってはどうでもいい報告なんだけど。

 伏黒くんが心配してくれて嬉しかったから、どうしても報告したくて。


「知ってる。……オマエが元気そうだから」


 伏黒くんが最後に見た私は呪いが溜まって顔色最悪だったから。

 今の元気な私は呪いをどこかに流したからこそ存在する。


 となれば、私が五条先生と仲直りして。

 何をしたかも伏黒くんはお見通しなわけで。


「よかったな、綾瀬」


 少しだけ顔を歪めて、伏黒くんは微笑んだ。
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