第18章 夏の空の落とし物 後編 お相手:竈門炭治郎
「ねぇ、炭治郎君が
行きたいって思ってる所に行く前に、
私も…どこにあるのか、
知りたい場所があるんだけど?」
ふっと隣に居た炭治郎が
みくりの言葉に笑って
「多分、俺が行きたいって言ってる場所と、
みくりさんが場所を確認したいって
言ってる場所は同じだと思いますよ?」
炭治郎がそう言って
みくりが目をパチパチと瞬かせた
え?でも
私が行きたいって思ってるのは
「美空のお墓…の場所、聞きたいんだけど。
この近く、だったよね?」
「俺も、そう思ってたんです。
ここを離れる前に、美空の墓に
手を合わせたいと思ってました。
みくりさんと、一緒に」
線香と花を買って
炭治郎が一週間前に任務で行った
山中の墓地を目指した
山の木々に覆われているせいで
昼間なのに暗くて
気温も低くて過ごしやすい
山道を歩いて
しばらく進むと その墓地が見えた
そんな規模は大きくはないが
山中に出る鬼がでるようになって
墓参りの足が遠のいていたらしいが
彼が鬼を退治したお陰で
また 前の様に墓参りに
訪れる人が戻った様だった
墓前には花が手向けられていて
並んでいる墓石の中でも
明らかに無縁仏の粗野な石を積んだだけの
墓の並んでいる隅の方に
炭治郎が歩いていくと
「あった、これです」
井戸から水を置いてあった桶に汲んで
みくりが炭治郎の元へとそれを運んだ
炭治郎に線香をつけてと手渡すと
その墓石に水をかける
無縁仏の墓なのだから
水を入れる場所も花を手向ける所もない
ただ 石を土の上に置いただけの物だ
「彼女の、美空の家族の事……、
聞きそびれちゃいました」
「でも、……ここが
そうだってわかったから、それでいいよ」
線香を立てる場所もないから
墓石の下の盛ってある土の上にそれを
供えて手を合わせる
「これは……、私からのプレゼント。
好きな食べ物とか、何も聞いてなかったから。
でも、ひまわり、髪飾りがそうだったから。
好きな花だったら、……いいんだけどっ……」