• テキストサイズ

おてんば少女が恋に落ちた

第4章 水


先生がいなくなって私1人になり、保健室は静けさを増した。
さっきまで気づかなかったけれど、つんっと消毒液の匂いがした。


「はぁー、暇だなぁ…。」

私は再びベッドに横になり、そう呟いた。

(てか、私を助けてくれた人って…柚葉?)

柚葉は泳ぐのがとても得意だ。
だから、柚葉が助けてくれたのか…?

「いやいや、でも。手掴まれた時、女子だったらあんなに力強くないし…うーん…。」


(もしかして、助けてくれたのは…)


「白井…くん…?」



「び、びっくりしたぁ…!いきなりオレの名前呼ぶなよな。」

「え!?」

私はびっくりして飛び起きる。
自分しかいないはずの保健室に、突然声が聞こえたからだ。

「よぅ。具合はどうだ?」

白井くんはそう言って、ベッドのそばにあった椅子に腰掛ける。

「大丈夫そう。」


「ところでお前、何で教室の前で泣いてたんだよ。」

「…な、泣いてなんかないし。」

私は声を低くして答える。
今、一番聞かれたくないことを聞かれたからだ。


「…何でお前はさー。そうやって、泣くの我慢するの?」

「あの人と…約束したから。」

「あの人?
あの人って誰だ…?」

「小さい頃に会った、白いほうきに乗った人…。」

「はぁ?!バカか、お前。今の今までバカ真面目にその約束を守ってきたのか?!」

「白井くんにとっては、どうでもいいかもしれないけど…
私、昔から泣き虫だったから、泣いちゃうとまた泣き虫に戻っちゃうから、
私にとっては大事な約束なのっ!」


私はまた声を張り上げてしまった。


/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp