第4章 水
白井side
(なんなんだ、アイツ…。命綱取りに来たくせに、佇んで。おまけに泣いてたし…。
なんかあったんか?)
オレはそう思いながら、教室のドアを開けた。
ドアを開けると、2人の女子生徒がいた。
「あっ、白井く~ん!」
「今、星山さんの声が聞こえたんだけど、そこにいたの?」
(もしかして、アイツが泣いていたのはコイツらが原因か…?)
「いや、いなかった。」
オレはアイツのロッカーから、命綱を手に取りながら言った。
「やっぱりー?ほら、やっぱ気のせいだったんだって!」
「そうだよねー。白井くんも嫌でしょ?あんな、どんくさい人とペアになって。」
「…あぁ。」
「だよねー、白井くんもそう言うと思った!」
「でも、今は思ってない。」
「「え?」」
オレの言葉に驚く2人。
そんなことはお構いなしに、オレは話し続ける。
「お前ら目に見えていることが、全部正しいとでも思ってんの?
確かにアイツは、不器用でドジでどんくさい。
だけど、頑張ろうと思う気持ちは誰よりも強いし、人一倍努力家だ。
だからみんなが、見えないところですごく努力してる。」
「……。」
「どうしちゃったの…?白井くん。」
オレは普段あまり話さないから、驚いているのだろう。
「どうかしてるのは、お前らじゃないのか?
人のことをどうこう言っている暇があるなら、さっさと練習したらどうなんだ?
お前らが陰で、ぺちゃくちゃお喋りしている間に、そのうちアイツ…宇宙に、先を越されるぞ。」
「「……。」」
「オレが、言いたいことはそれだけだから。それじゃ。」
オレは言いたいことを、はっきりと言ってその場をあとにした。