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暗殺者の正しい飼い方しつけ方

第1章 「殺されてもらえますか」


ゾクリ。
突然襲った、背筋が凍る、鋭い感覚。
に。
無意識に震える体を抱き締めて。
彼を見れば。
全身が粟立つような、錯覚。
毛穴が開く。
全身が伝える。

あいつは、危険だと。


逃げろ、と。




本能が、言ってる。




「…………っ」



逃げたい、のに。
からだが固まって動かない。
殺し屋の、プライドか。
恐怖か。
足がその場から、離れることを許してくれない。




「………怖い、ですか?」
「え」
「心音、乱れてますね」
「しん、おん……?」


何、言ってんの?



伸ばされた掌に、咄嗟に後ろへと跳びはね距離を取った。


「そんなに怯えなくて大丈夫ですよ。あなたのことが気に入りました」

は?


「だから」




窓から入り込む月明かり。
暗闇と月明かりの中、眼鏡の奥の表情までは見えない。





「………私に、殺されてもらえますか」



「━━━━━━ッッ」







言葉の意味を理解する前に生唾が喉を鳴らし。
咄嗟にすぐ近くに確保した出口へとチラリと気付かれない程度に、視線を向けた。
そのまま足を動かそうと、した瞬間。
目の前にいたはずのターゲットが視界から消えて。



え。




チクリ。
と。
首もとへと走った痛み。




しまった。




そう、思った頃には。
あたしの体は全ての思考を停止し。
ガクリと。
ターゲットであるはずの男の腕へと、崩れ落ちて言ったんだ。
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