第1章 グッドモーニング
「ねえ、橘ジン。」
「どうしたナナ。」
「このコーヒーいつもと味が違う。」
「豆を変えてみたのだが気に入らなかっただろうか。すまない。」
「美味しいよ。橘ジンはセンスあるよ。」
「そうかね。気に入ってくれて良かった。」
橘ジンといつものように朝食後のコーヒーを飲んでいる。
わたしはコーヒーには砂糖と牛乳を入れてカフェオレにして飲むのが好きなのだが、橘ジンはいつもブラックで飲む。
やっぱり大人の男性なんだな。
「ナナお弁当出来てるよ。」
「ありがとう。今日のおかずは何?」
「ミニハンバーグ、ササミのチーズ挟み揚げ、それと」
チュッ
「急にどうした?」
「なんか、したくなっちゃった。」
突然のキスに橘ジンは鳩が豆鉄砲を食ったように驚いている。
だが、すぐに柔和な表情に戻った。
「ナナ、そろそろ行かないと遅刻するよ。」
「そうだね。じゃあ、『いつも』のしてよ。」
「ああ。」
橘ジンはわたしの額にそっと唇を当てた。
「神の加護が君にあらん事を。」
「橘ジンは無神論者でしょ?まあ良いや。」
「晩ご飯は何が良いかね?」
「橘ジンに任せるよ。」
わたしは玄関で靴を履き、橘ジンの方を向いて行った。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃいナナ。今日も頑張りたまえ。」