第5章 Episode:05
「!」
「!」
呼ばれてハッと顔を上げると、野薔薇ちゃんが待ち合わせ場所についた私に手を振っていて。
もうここまで来てたんだ、と驚きながらも、ズキズキと痛む身体を叱咤する。
私、は、手を振り返すことが出来なかった。
「遅いから心配したわよ」
言いながら、私の方に歩み寄って来てくれる野薔薇ちゃん。
ごめんね、と謝ると、全然、と笑みを浮かべなが許してくれたものだから、堪らず顔を伏せた。
野薔薇ちゃんを、真っすぐ見ることが出来ない。
「…てか、制服どうしたの?」
「!、ぁ……」
土だらけの汚れた制服に、野薔薇ちゃんの視線が走る。
頭のてっぺんから爪先まで見た後、野薔薇ちゃんの瞳が、ボタンが千切れたせいで大きく開いている胸元のところで止まったのが分かった。
何もつけられていないそこを、無言で見つめる野薔薇ちゃん。
毎日つけてるって言ったくせに、なんでつけてないの?…勝手な想像だけど、そう野薔薇ちゃんに言われてる気がして。
今日は家に置いて来てるの、なんて言える訳ない。正直に、クラスメイトにとられました、なんて以ての他だ。
何を言っても野薔薇ちゃんは哀しむと分かっているのに、色んな嘘、色んな可能性が頭の中をグルグル回る。
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