第32章 姫さんと狐の夜*

どちらかともなく唇が合わさった。
光秀と華音はこれまで何度も口づけし合ったが、今宵ほど情欲的な気持ちを乗せてはいなかっただろう。
これから口づけ以上のことをするのだ。
光秀はすでに、華音の襦袢姿を見て体が熱を帯びているし、華音も光秀との深い口づけで体の芯がずくりと疼いた。



「んっ……」



ちゅくっと水音が響くたび、華音の吐息が漏れる。
その声をもっと聞きたくて、光秀はさらに深く舌を差し入れていく。
すると、華音もまたおずおずとその舌に自分のものを重ねてきた。
二人の体温が上がり、部屋の温度も上がっていくような気がした。
そうしてしばらく互いの舌の感触を楽しんだ後、どちらからともなく口を離す。
二人の間に銀糸が伸び、やがてぷつりと切れた。



「…はぁ」

「華音、もう後戻りは出来ないぞ」

「……何を今更、戻す気はないでしょう」



恍惚としながらも華音は不敵に笑い、今度は華音から光秀の唇に吸い付いた。
光秀は華音に応えながらゆっくりと彼女を押し倒し、襦袢に手をかけた。
しゅるりと帯を解くと、積もった新雪を思わせるほどの白く美しい肌が覗く。
豊満な双丘は仰向けでも形が崩れず、桃色の飾りはつんと上を向いていた。



「……美しいな」



思わず呟くと、華音はその言葉に反応して唇をきゅっと結んだ。
怒りではなく羞恥によるものだ。
腐るほど言われた言葉で、褒められて照れたのではない。
光秀だからだ。



「……あんまり見ないでください」

「それは無理なお願いだな」



光秀は愛おしむように胸に触れる。
ふわふわとした柔らかさを堪能するように優しく揉みしだいていると、指先が頂に触れた。



「あっ……」



途端に甘い声が上がる。
普段の高潔な華音からは想像もできないような甘い声だ。
それをもっと聞きたくて、光秀は親指でその尖りを押し潰したり摘んだりした。



「……ふっ、はぁっ」



元々我慢にも痛みにも強かった華音だ。
快感に対しても理性で抗い、声も控えめなのも不思議ではない。