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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第5章 姫さん、はじめての朝帰り


「そろそろお暇します。楼主どのの病の症状に効く薬を貴女達に預けておきますね」

「ありがとう。泊まっていかなくていいのかい?」

「もう夜遅いので、朝に帰るより夜明け前の方がまだマシかと。怒られ具合が」

「そうかい。楼主とあの子達はアタシらで介抱しとくから」

「では、介抱を手伝ってくれた禿の子達にはコレを」

「あら可愛い」



華音は例の金平糖を売っていた店でついでに買ったお菓子を渡した。
チョイスが可愛いものが多いあたり、彼女はちゃんと女の子だ。









「どうやって帰ろう」



遊女達に見送られ、人っ子一人いないところでぽつんと呟く。
帰り道は分かる。
しかし、その道だと絶対夜明けを過ぎてしまう。
それだと確実に怒られる。主に“ひ”から始まる人に。
今の時間でも十分怒られるのだが、早い方がいいだろう。

その他に道があるとすれば、まず誰も好き好んで通らないであろう森の道をまっすぐ突っ切ること。
しかし危険性も高い。
今のような時間帯なら尚更。

しかし迷っている時間も惜しい。
腹を括り、懐からそれを取り出した。
戦国時代で服も下着も燃やした中で、残した数少ないものの一つだ。



(“使う”のは父様と母様が亡くなった時以来…何年ぶりだ?)



真夜中の冷たい空気の中。
めいいっぱい息を吸って、その“音の出ない笛”に吹き込んだ。









「……?姐さん姐さん」

「どうした?」

「今何か聞こえなかった?」

「アタシは何も聞こえなかったよ。あ、はいコレお駄賃。さっきの見目麗しいお客様からの」

「わあ!可愛い」



華音が去った後の店では、禿の一人が可愛らしいお菓子を前に嬉しそうに笑っていた。



「美味しい!姐さんも食べて食べて!」

「はいはい。…それで?さっきあんたが聞こえたってのはなんの音だった?」

「うーん、えっとねぇ……






大きい犬?みたいなのが、ワオーンって鳴いたみたいな音!」
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