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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第5章 姫さん、はじめての朝帰り


「華音、金平糖を買いにどこまで行った」

「城下まで」

「ほう、随分長旅だったな」



深夜、ほとんどの者がぐっすり寝ている中。
きっちり正座する華音の目の前には信長が仁王立ちしていた。
普通の人、というか並の武士ですら失神しかねない状況にもかかわらずけろっとしている華音は異常である。



「では質問を変える。花街からここまでどうやって帰った?」

「………」



初めて、華音は信長からの問いかけに間を置いた。
監視がいることに関しては、気配は分からずとも把握していたので特に驚かなかった。
おそらく、花街に行った事情も知られている。

それについては彼らは華音に何も言わなかった。
姫君としてなら褒められたことではないが、医者としてならあの行動が最善の一つだった。
尤も、武将である彼らに医者の正しさが理解しきれているのかは別だが。

問題はそこではない。
花街からの帰り道、華音は普通の道を行かずに森の中を突っ切って行ったことだ。
おかげで夜明け前には城に戻っていた。
すぐに見つかったが。

彼らが訊きたいのは、森を抜けた方法である。



「言いたくありません」



しかし、華音ははっきりと拒否の意を示した。
沈黙でなければ、“言わない”や“言えない”でもない。

“言いたくない”の一言には意味がある。
まず、誰かの手を借りたとしても、その誰かから脅されているわけではないということ。
そして、おそらく方法は簡単に人には言えないもので、それを言うほど華音は信長達に心を開いていないこと。

信長達は莫迦ではない。
華音の意図した一言に気づいた。
秀吉は何か言いたげに口を開こうとしたが、予め信長あたりに言われていたのか、声を発することはなかった。

しばらくして信長が口を開いた。



「…まあいい。暫く貴様は部屋で謹慎だ」

「わかりました」

「華音様、謹慎中に何か読みたい本があれば仰ってください」

「三成くんおすすめのを20冊ほど」

「はい」

「「………」」



全然反省してねぇなこいつ、と信長と秀吉の心の声が一致した。
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