• テキストサイズ

【イケメン戦国】白衣の戦姫

第18章 姫さんと狐の出張


それから座長は、一座の仲間を光秀と華音に紹介した。



「よく来たなあ、おふたりさん!」

「次の祭りまでの短い間だが、どうぞよろしく」

「よろしくお願いします」



光秀は武将のみんなに対するのと同じように、楽士や踊り子たちに自然と対等に振る舞っている。
気さくにみんなと声をかけ合う様子は、誰もが光秀は本物の旅芸人なのだと思うだろう。



「おや、その足はどうなさった?」

「戦に巻き込まれてなあ……。使い物にならなくなっちまった」

「そうか……。手伝えることがあれば、何でも声をかけてくれ」

「私も多少の医術の心得がありますので、相談に乗りますよ」



一人の楽士の足は不自由なものになっていた。
光秀に続いて、華音も医者として声をかける。
すると一人の踊り子が、気さくに華音の肩に手を置いた。



「いーい男にいい女だねえ。みんなウカウカしてらんないよ」

「そういう貴女もいい女ですよ。この一座は美男美女ぞろいらしい」

「へーえ、それじゃ、わしもかい?」

「それはもう、座長が美男の筆頭でしょう?」

「ははは!うまいねえ、お二人さんは!」



二人を中心に笑いが広がっていく。
普段は笑うことの少ない華音も、光秀達につられるように鈴を転がす声で笑った。

楽士や踊り子の中には、身分の低い人々や戦火に巻き込まれ国を失くした人が少なくない。
先程足をやられていた楽士もその一人だろう。
これから何度も戦が起きれば、何度でも同じことが起こる。
光秀も華音も、そうさせないようにすることができる立場にあると自覚している。
二人の背後には天下人がいるのだから。

だからこそ華音は、今この縁を無駄にすることがないよう、この心地良い一座の輪を忘れないように目に焼き付けた。



ひと通り挨拶が済むと、座長が光秀と華音に笑顔で告げた。



「いつもは野宿するんだが、お殿様のはからいで宿を与えてもらっとるんだ。あんたらの部屋も用意しとる。荷物を置いといで」

「助かります」

(……宿)



ものすごく、ものすごく嫌な予感がした。
/ 252ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp