第10章 愛しい人
白哉とて、万能ではない。
例え、瀞霊廷でも有数の大貴族であっても。
例え、隊長と呼ばれるだけの力を持っていても。
結局、大切なものを守ることすら出来ない自分が…ひどく滑稽に見えた。
すまない…、そんな謝罪の言葉をぐっと白哉は呑み込んだ。
美穂子が、決めたのだ。
自分が謝るなど…おこがましい。
「美穂子……私は最後まで諦めん。お前と子を両方助ける方法をぎりぎりまで探す。いいな」
「……うん」
美穂子は小さく微笑みを浮かべて、白哉の腕の中に包まれた。
白哉の言葉が…現実になる日は、きっと来ないだろうと思いながら…それでも、諦めずに探してくれるという夫の愛に強く胸を打たれた。
ねぇ、白哉。
私は幸せだったし、これからも幸せよ。
例え、私があなたと同じ時を過ごせなくても。
あなたに愛された事実は本当だもの。
そして…あなたの元に子供を置いていってあげられるもの。
だから。
無理はしないで。
私のために…。
願いは…ひとつだけだから。
あなたが、幸せだって思ってくれることだけ。
ねぇ、白哉…