第8章 運命の歯車が動き出す
美穂子は―…ふと意識が浮上するのを感じた。
コポ…と泡の音がした。
(ここは―…水の中?)
最初にこの世界に来た時のような錯覚を覚える。
けれど、あの時のような不安や疑念は感じない。
どことなく―…安心すら、覚えた。
ゆらゆらと身体が水の流れに任せて、彷徨うような―…そんな浮遊感を感じる。
まるで、現実化のように。
美穂子は、気持ちよさげにゆっくりと目を閉じる。
『―……ぃ……ぉ』
耳に声が聞こえる。
遠くで―…雑音にまみれて、何を言っているかはわからない。
「誰―…?」
美穂子は、そうつぶやいた。
けれど―…美穂子への返事はなかった。