第4章 瀞霊廷の生活
朽木家に引き取られて、早一週間。
美穂子は小さくため息をついた。
とにかく暇だ。
チンプンカンプンだったこの場所の知識は、だいたいわかった。
尸魂界と呼ばれる魂の故郷で、その魂を監視しているのが瀞霊廷にいる死神と呼ばれる部隊であること。
そして、その六番隊の隊長がこの屋敷の主である朽木白哉であること。
総隊長に呼ばれたときに感じた威圧感は、霊圧と呼ばれる霊力のようなものだということもわかった。
そして―…白哉いわく、美穂子も霊圧があるらしい。
美穂子はここに来るまで霊なんてものは見たことなどない。
それなのに、霊圧があるといわれてもいまいち釈然としない。
(それとも、私が生きてきた世界には霊なんていないのかな?テレビでやってたこととか、嘘かー…)
だとしたら、自分に例え霊感のようなものがあったとしても気づかないのも仕方がない。
同時に、心霊現象などは眉唾物だということになってしまうのでひどく残念だ。
美穂子は結構そういう番組が好きだったのに。
美穂子本人の自覚は全くないが、この世界では腹が減るのは霊圧がある者だけで、隊長クラスの霊圧を受けても普通にしていることを鑑みるとそれなりの霊力を保持しているらしい。
とはいえ、死神でもない美穂子には、何ができるわけでもない。
そのため、美穂子はいつまでいるかもわからないこの世界に、出来るだけ適応しておかなければならなかった。
幸いだったのは美穂子の知っている世界とは全く違う世界に戸惑いはするものの、人として生きていく習慣は変わらないことだ。
特に日本語を使っているというのは非常に都合がよく、おかげで旧字体の筆文字を一週間かけて読み書きできるようにもなった。
そうなってくると、とにかく暇だった。
一応、朽木家の図書は許可を得ていくつか読んでいるが、それもずっとでは飽きてしまう。
かといって、うろうろできるわけもなく。
結果的に―…暇で仕方がないのだ。