第3章 瀞霊廷での居場所
すたすたと先を歩く白哉に遅れないように、美穂子はついていく。
広い屋敷にびっくりしながらも、行く先は―…玄関だった。
「あの…?」
「お前が何者であるか、説明しなければならない」
美穂子は少し目を見開くと、少し考えるそぶりを見せてから一つ頷いた。
「わかりました。えっと、朽木さんが連れて行ってくれるのでしょうか?」
「あぁ」
美穂子は小さくうなずくと、用意された下駄を履いた。
「何から何まで、すみません。よろしくお願いします」
美穂子はぺこりと頭を下げた。
それを少し驚いた表情で白哉は見つめると、いや…とだけ答えて背を向けて歩き出す。
美穂子はその後を追って玄関を出て、一度振り返って屋敷に一礼をすると、白哉を追う。
よくわからないけれど、とりあえず助けられたのに間違えはない。
そして、素性のわからない女など放り出してしまえないいのに、それをせず然るべき場所まで連れて行ってくれる。
その先に何があるかはわからないが、今この瞬間は感謝すべきだ。
美穂子はそう思って、先ほど頭を下げたのだ。
本来であれば、助けられたのだからあの部屋で感謝しなければならなかったのだろうが、なにぶん混乱していてそれどころではなかった。
そう言った意味でも、とりあえず感謝の意を伝えられて満足だった。
不安はいっぱいだし、これから連れて行かれるところで…もしかしたら捕まるのかもしれない。
下手すれば処刑とか処罰を受けるのかもしれない。
女と言うことで、そういうところに売り飛ばされたり、慰み者になるかもしれない。
それでも―…今は、この目の前を歩く人は美穂子に人並みの服と睡眠をきちんと提供してくれた。
それがどれだけ嬉しいか。
美穂子は小さく笑った。
(もしかしたら―…これから先は、笑うなんてことできないかもしれないもの)
今だけは―…感謝しよう。