第3章 瀞霊廷での居場所
白哉が部屋を出て行って、美穂子は置かれていた服を手に取った。
「―…着物?」
藍色に染め上げられた着物と、少し黒っぽい濃い紅色の帯。
そして必要な小物が一式。
あまり着物の価値はわからないが、布はとてもしっかりしていて縫製も丁寧であることから相応のものなのだろう。
美穂子はそれらをじっと見つめて眉を顰めた。
着物など普段着ないこともあって、おぼろげにしか覚えていない。
こんな立派なものを着れるだろうか。
「―…特に帯。うーん…太鼓結びくらいなら…できるかなぁ?」
美穂子は首を傾げながら、ゆっくりと立ち上がると姿見の前へと移動する。
来ていた浴衣を丁寧に畳んで、美穂子は着物を着てみる。
160cm程度の自分には少々着物の裾が長い。
懸命に長さを調節して、着物を着ると、うろ覚えの太鼓結びで帯を結った。
くるりと回れば、とりあえず恥ずかしくない程度には何とかまとまった。
それにホッとすると、そのまま鏡の前で髪を手櫛で整えて、もう一度全身を確認してから、部屋を出た。
カラリと小さな音を立てて戸を開ければ、その先には、柱に凭れかかっている白哉がいた。
「―…着物は着られるのだな」
「え、あー…うろ覚えなんで、ある程度…適当ですけど」
美穂子が苦笑すると、白哉が美穂子の後ろへと回った。
「朽木さん?」
「…動くな」
帯に触れているのが、なんとなくわかる。
シュルリ…キュ…。
少し帯で締め付けがされて、自分の結びよりも少し安定感が増したような気がした。
「…これでいい。いくぞ」
「は、はい」