第1章 曇りのち雨
呪術界の御三家が一つ五条家に神童が誕生したという話がまだ幼かった私の耳にも入るには時間はそう掛からなかった。
何故なら私も御三家には数えられなくとも呪術師の家系。
正直どうでもよかった、神童が産まれようが。
呪術界隈で囁かれている呪術師の人手不足だって心底どうでも良くて…一言で言えば【無関心】
どうしてか?それは全て聴こえるから。
五条家に生まれた神童は何百年に生まれるか生まれないかという奇跡にも近い【六眼】と【無下限呪術】の組み合わせという…いわば最強って訳で。
かく言う私も、相手の術式が視える六眼とは異なるが近しいものを持っている。
聴きたくなくても相手の思考等が聴こえてしまう【聴躁】
この不便な能力は自分しか知らない。
親を含めた縁者全員に黙っているから。
理由?そんなの簡単
相手の思考が筒抜け。
だから口から羅列される空っぽな言葉の裏に腹の底で本当は何を考えているのか丸分かりだから、そんな胸糞悪い連中に明かす必要もないし人間なんて呪術師も非呪術師も大して変わらないゴミみたいな連中ばかり
そんな幼少期から捻じ曲がった環境で育ってきた私も今日から華のJK!!!と行かず呪術高専に入学、任務学業任務学業任務と板挟み生活が始まるわけで。
縁者以外との生活は無駄な声が今以上に聞こえるハズだから呪具を取り扱っている店で頼んでおいた特注のヘッドホン
これを付けておけば他人のドス黒い心の声を聞かずに済む…いわば自衛のような物。
呪力コントロールは出来ても術式のコントロールや領域なんかは未熟な面が目立つから覚えていかないといけなくて、億劫な気持ちを振り払い自分の為だと言い聞かせ前向きに教室へ入る。
そう、前向きに
目の前の男に会うまでは…ただ順調に学校生活を送るハズだった