第1章 曇りのち雨
私は能力の発現を誰にも言ってこなかった。
この力の危険さは持ってる自分が1番わかっていたし、私の誕生を喜ばしく思っていなかった身内連中がこの力を渇望している。と知ったのは皮肉な事にも力によって声を聴いていた幼い私。
幼い頃から訓練を積んでいれば声を聴くだけでなく、その声を利用して心の操作を出来てしまう力。
何故重要視されるのか、人は心が原動力になっている所がある。
故に心さえ操作してしまえばおしまいなのだ。
ある時は攻撃的になり、またある時は聖母のように優しく、そして廃人にだってしてしまう事が出来る。
私は未だに心を操作する事は出来ないけれどそれでいい。
こんな危険な力は隠しておくべきなのだ。
そして私の代で封印してしまえばいい、この先誰1人として力に振り回されないように。と
「夜蛾先生、くれぐれもご内密に。」
そう言って話を終えた2人が見えなくなってから無機質な壁に背中を預けたまま五条は小さく息を吐く。
「アイツもしがらみ持ち…か。」
任務に発つ当日
何故か校門の前にいる五条
「何してんの五条」
そう聞いても何も答えない。
補助監督を待たせてしまっては申し訳ない。
そう思い校門をくぐろうと無言で立ってる五条の横を通り過ぎようとするとグイッと後ろに傾く私の体。
別に私が1人でにバランスを崩したわけじゃない。
五条が引っ張るから……、なんで引っ張る?
「あの、五条。悪いんだけど私時間がないからアンタの暇潰しには付き合ってられないの。服、離してくれない?」
「お前も色々あんのな。」
珍しく大人しい五条を不思議に思いながら俯きがちな五条の顔を覗き込むと私よりも大きい手が頭に降ってくる。
無造作にワシャワシャと髪を乱してくるいつもと明らかに違う五条に戸惑う私
「戻ってきたら色々と話聞いてやる。チビ」
そう言い残して私に背を向け校舎に向かっていく五条
「何なんだ一体…」
ポツリと呟いた私の独り言は届くわけもなく
ただ、気遣われたという優しさが心にストンっと落ちてきて目尻に溜まる雫を拭い長期任務へと一歩を踏み出した。
「ありがとう、五条」