第2章 cheer 影山
「ゲームセットー!勝者アドラーズーー!強い強い!
今季負け無しです!!!」
実況の声がスタジアムに響く
アドラーズに入って2年目の夏
俺は相変わらずのバレー漬けの日々を送っている
ロッカールームでシャワーを浴びて着替えをする
他のチームメイトはさっさと帰ったが、俺はそれからまだ、入念にストレッチをする。自己管理は徹底するのがモットーだ。沢山運動をした後はしっかり伸ばしておかないと怪我に繋がる。バレー日誌をつけて帰ろうとすると、控え室の電気がついている。
消し忘れか?それともまだ誰かいるのか?
中をチラッと覗くと1人の女性がストレッチをしていた。
誰だろうか
Tシャツにピタッとしたレギンスを履いてかなり入念にストレッチをしている
すごい身体の柔らかさだ
完全に180°開脚した状態で身体を左右に伸ばし、そのまま前に倒れる。次に開脚したまま膝を曲げ足の裏を合わせる
しなやかな体 緩やかな曲線を描くヒップライン
なんかエロい
そう感じた
「いいケツしてるな」
あれ、もしかして口に出ていたかも
思った時にはもう遅く
彼女はこちらを見ている
ヤバイ
「いや、あのこれはその、思わずというか」
彼女はクスリと笑った
俺は必死で話題を変えようとする
「あんたはこんなとこで何してんだ?」
「私のことなんか知るわけないか、はじめましてアドラーズのチアリーダーの橘歩よ。カゲヤマトビオ君」
「俺のこと知ってんのか?」
「アハハ、おかしなこと聞くのね。アドラーズを応援してるのに知らないわけないでしょ」
それもそうか
で、そのチアリーダーが遅くまで残ってストレッチ
他のメンバーはみんな帰ってるのに
「応援ごときで、何をそんなに入念にストレッチしてるんだって思ってる?」
「いや、そんなことは」
「私はね、カゲヤマトビオ君がアドラーズに来るずっとずっと前からここにいるの、幼稚園児の頃からね。私もあなたと同じ、お給料貰ってチアしてる」
彼女はアドラーズのチアリーダーの下部組織
アドラーズジュニアチアの頃から在籍しているのだ
プロだと思った
身のこなしだけでなく仕事に対する姿勢
自分と似ていると感じた