第5章 恋
「いや、あ、あの…忘れて!!ごめん!!違うの…その、違わないけど違くて…その」
ワタワタと両手をぶんぶんと振りながら私は真っ赤な顔を隠すように傑くんから逃げようと椅子から立ち上がる。
「まって…が私のことを好き…って言ったかい?」
傑くんは私を逃がさない、と言うかのように腕を掴みドンと壁際に追い込む。
「う、あの…」
もうすぐ壁ドンか、だなんて呑気に考えてる暇もなく壁に押し付けられた。
「……嘘、だったら呪い殺しそうなんだけど本当かい??」
「ころっ…え………いやあの…す、好きだけど…その」
「ねぇ、。私もね君のことが好きなんだよ、初めて会った日から」
なんて、衝撃の一言が傑くんの口から発せられた。
「で、でも…私は人間じゃない、から…」
「私はね、という存在そのものが好きなんだよ。まだ半年の付き合いかもしれないけど合同任務の時にちょっと擦り傷したら直ぐに絆創膏貼ってくれたり、そんな小さなことからどんどん好きになったんだよ。その代わり自分のことには疎いから守りたいんだよ。」
「…私、いつ死ぬか分からないよ?」
「それはお互い様だろう?」
「こんな、私でいいのなら…」
きっと今の私は泣いているだろう。
悟に助けられたあの日から私は自分を人間だと思うことをやめた。人並みの幸せを望むことをやめた。
お母さんやお兄ちゃんの仇を打つだなんてことも考えなかった。
ただ、ただ2人に会いたくて自分が自分であるまま死ぬために…。
初めて好きになった人と同じ気持ちになれることがとても幸せな事だと噛み締めながら私はそっと傑くんの身体に腕を回した。
「私………傑くんが好き、大好き」
この世で愛が1番の呪いだ