【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
__コンコン、
「そよ香さん、食べ終わりましたか?」
ドアを開けると布団が盛り上がっている。
規則正しく上下を繰り返し、
その中でそよ香は眠っていた。
「…まるで眠り姫だな」
ベッドに腰掛け、そよ香のおでこに手を当てる。
薬が効いてきたのか
熱は下がり、顔色も良く見える。
「君だったのか…マデイラ」
顔にかかった髪を指でそっとはらう。
白い素肌に薄桃色の頬。
寝顔は何も知らない純粋な少女のようだ。
(…日本の女は幼すぎて見えるな)
昨日から今日にかけて
沖矢は田中から拝借したスマホを解析していた。
スマホの中には何もデータは残っていなかったが、
メールを何件か受信した形跡があった。
既読後30分で自動的に消去される仕組みになっていて、
さらに送信元を探られないように
海外のプロバイダをいくつも経由しているようだった。
なんとかメールの内容を復元できないか
隣に住む阿笠に依頼したところ
直近の1通だけ復元することができた。
「マデイラを捕まえろ」
その文章とともに、添付ファイルが1つ。
そこには確かに、
沖矢が連れ帰ったそよ香の写真があった。