【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
(…誰の服?どうやって着替えたんだろ)
__コンコン、
「お待たせしました」
沖矢がサイドテーブルに置いていた本をどけ、
器の乗った木製のお盆を代わりに置く。
ふわっとお米のいい匂いがした。
「玉子がゆとお味噌汁です。簡単なものですが…」
小さなスプーンでお茶碗に入ったおかゆをすくう。
ふーふーと息をかけると
そよ香の方に向けた。
「はい、あーん」
「… …」
「…どうされました?
もしかして、卵アレルギーでしたか?」
キョトンとした顔で、沖矢はそよ香を見つめる。
危ない、危ない。流されるところだった。
よくよく考えてみればこの状況だって
怖いし、危険なのでは…
とにかく、どうしてこうなったのか事情を聞こうと
そよ香が口を開きかける。
「むぐっ…」
おかゆの乗った温かいスプーンが
唇に押し付けられた。
「そよ香さんが疑問に思っていることは
後ほどしっかりお話しします。
まずはご自分の身体を治すことを優先してください」
声のトーンからして嘘をついている感じはしない。
そよ香は黙っておかゆを口にした。