【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
沖矢が少し困ったような顔を向ける。
相変わらず頭も痛いし、身体も熱くて不快だが
沖矢が言うことも一理ある。
ありがとうございます、と言おうとして
そよ香は口を開いたが、
喉が乾いていて咳き込むしかできなかった。
「失礼します」
沖矢はそよ香の上半身を起こすと
背中が痛くならないよう、壁に枕を縦に挟んで
背もたれを作る。
水の入った小さなグラスに細いストローを挿すと
そよ香の口元に近づけた。
「ゆっくり飲んでくださいね」
唇にストローが触れると、
水がゆっくり吸い込まれていく。
少しだけ冷えたそれは、
そよ香のほてった体にしみこんだ。
「ご迷惑おかけしてすみません。ありがとうございます…」
「迷惑だなんて思っていませんよ。
下賤な輩から姫君をお守りするのは騎士の役目…
薬を飲む前に食事を摂ったほうが良い。
今おかゆをお持ちしましょう」
沖矢は不敵な笑みを浮かべると
ドアの向こうへ消えていった。