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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第3章 人でなし




「熱いですね。

昨日のことがありますので、複数の薬を用意してあります」



昨日のこと…

第3者である沖矢の口から発せられたと言うことは

あれは現実だったのだと思い知らされる。



「… …」



涙がこぼれ落ちそうなのを我慢して

そよ香は顔を横に向けたが、

1粒、2粒と枕に吸い込まれていく。


沖矢は体勢を変え、ベッドに腰掛けると

そよ香の頬を優しく撫でた。



「…もう、大丈夫ですよ」



その手が、その声が

そよ香の頭にこびりついた恐怖を

そっとすくってくれたような気がした。



目頭が熱くなり、胸の奥が痛くなる。

無理やり布団を引っ張って、頭までかぶった。



名前しか知らない人に

これ以上、自分の弱みを見せたくなかった。















「…さん、そよ香さん」



何度目かの名前を呼ばれたとき、

自分が眠ってしまっていたことに気がついた。



「ん…」


「すみません。気持ちよさそうに眠っていたので

起こしてしまうのは気が引けたのですが、

もう半日以上飲まず食わずなのは

いかがなものかと思いまして。

薬も飲んでいただきたいですし…」




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