第2章 MEN
声が、聞こえる。
少し低くて、力強い声。
私の恐怖の対象である声じゃない。
私の中で恐怖感を呼び起こす低さではない。太くもないし、濁ってしゃがれた声でもない。
高すぎないトーンで、しなやか。凛とした、百合のような声。
愛しい愛しい、貴方の声。
優しく、暖かい。
貴方がこんなにも取り乱して私の名前を呼んでくれているのに、そう感じて安心してしまう私はきっと最低な部下なのだと思う。
「女」
「姦」
「嬲」
「欲」
「婦」
「性」
今現在 私に聞こえているもの、感じているもの、つまり、恐怖感の根本である“男”は、トラウマから引き出された幻覚だと考える。
汚い欲望を絡めた男たちが、私を追い詰める。
嫌。嫌だ。男の人が怖い。気持ち悪い。触らないで。
そんな中で唐突に聞こえてきた、彼女の声。
女の人だ…
そんな安心感に、浸される。
そして段々と、恐怖心が薄れていく。大丈夫。貴方が居てくれるなら………
男たちの姿が霧に消されるようにぼやけていく。ゆっくり、ゆっくりと今まで見ていた景観が形を失っていき、全くの白になる。
そこから視界が少しづつハッキリしてきた。男の姿はもう見えない。
代わりに視界の端に揺れたのは、茶褐色の長い髪だった。