第10章 愛及屋烏 【占い師】
正常な判断なんて出来なくなっていた。
こんな簡単に失恋するくらいなら、相手の貞操を奪ってやれば清き関係の婚約者にざまぁが出来る。
私の良くて悪い所は、思い立ったら直ぐに行動を取ってしまうことだ。
まずマジシャンのセルヴェ・ル・ロイさんと調香師のウィラ・ナイエルに頼み事に言った。
マジシャンには私の姿を別の人に変えることができるステッキと、ウィラには忘却の香水を貰った。
28で練習するために欲しいと言えば直ぐに貰えた。
その日の夜に行動に移す私もすごいと思う。
彼は安らかに眠ればいいのだ。
寝込みを襲うなんて私らしくない。
でも、バレたら終わりだ。
だからステッキまで貰ってきたのだ。
こんなとこでバレて嫌われたくない。
貞操を奪われたなんて知らないまま、私に話しかければいい。
万が一バレた時ように忘却の香水だ。
抜け目がない所は私らしい。
でも、私は最も重要な事を忘れている。
彼が〝点眼〟持ちということを。
あぁ、こんなに胸がドキドキする。