第1章 1
どれどれ、と見に行ってみたらターバン巻いた長身の男性がスラム街のおっさんに絡まれてた。
でもターバンの男は全く動じず、イライラしてる。助けた方がよさげ?
おっさんがターバンの男の胸倉を掴んで恐喝すると、逆に彼はおっさんの腕を掴みあげた。
「ひっ……うわあああ!!??」
魔法を発動させたのか、おっさんの周りに砂埃が舞い始め、彼の顔は青くなっていく。
息が出来ないのか金魚のように口をパクパクさせている。
あ、これヤバイ奴だ。ムシューターバン、殺る気だ。
「す、ストップ!!!」
さすがに見過ごしてはおけないため、ターバンくんに飛びついた。
いくら何でもありのスラム街でも殺しはあかん。絶対。
おっさんからターバンくんの手が離れて、彼は崩れ落ちた。気絶はしてるけど死んではない(多分)。
「おい、てめぇ……」
「少し落ち着きたまえよ、ムシュー。絡まれて苛立つ気持ちはわかっ……!!」
私の言葉は続くことはなく、ピシリと硬直した。
彼のターバンが捲れて素顔が露わになったからだ。
すごく顔立ちが整ったイケメンだけど、そうではなくて、今回の生誕祭の主役にそっくりだった。……いや、そっくりというより本人よね?なんでスラム街にいんの?
「おい。さっさと退け」
そこで我に返った私は、今の状況を把握した。
私が イケメンを 押し倒している。
「す、すまない……」
ギャー!恥ずかしい!!咄嗟のこととはいえ、イケメン……つーか第二王子押し倒しちゃった!!
私は猫みたいに飛びのいて、慌てて第二王子の腕を引っ張りあげて起こした。
なるべく平常心を保って先程の疑問をぶつけてみる。
「生誕祭の主役がどうしてこんな所にいるんだい?」
「なんだお前……俺のこと知ってんのか」
「私はスラム街の者ではないからね。それなりの教養は積んでるさ」
彼は「そうかよ」と興味なさげに言い捨てた。
うーん……王族となると誕生日って煩わしいのかな。全然嬉しくなさそう。
他国の王族とかこぞって来るから確かに疲れるのかも。
うむ、ならば……