第1章 1
「獅子の君。お腹は空いてないだろうか?肉アイスは如何?」
「は?肉アイス?」
クーラーボックスから少し形の崩れた肉アイスを取り出すと、彼の目線が肉アイスへ集中した。お腹すいてたのか。
「自信作なんだ。どうぞ、食べておくれ!」
すまんラギー。今度また作って来るから、今回は獅子の君に譲っておくれ。
「どうだい?口に合うかい?」
「……悪くねぇな」
私はその言葉にホッと胸を撫で下ろした。
舌が肥えてる王子様を満足させる物でないにしろ、不味いと言われて捨てられなかっただけ及第点でしょう。
ちょっとした気休めになればと思って渡したんだけど、気に入ってくれたのか、五個もあった肉アイスをペロリと平らげてしまわれた。
「ライオンの食べっぷりを間近で見れて嬉しかったよ!トレビアン!!」
「別に食べる姿なんざ人間と大差ねぇだろが。何が楽しいんだ」
「ノン。チラリと見える鋭い八重歯、実にボーテ!肉食獣の如く突き刺すような眼光も、ユラユラ揺れる尻尾も、毛高きオーラもまさに百獣の王!今までは遠目でしか見れなかったが、間近で拝める日が来ようとは!私はなんて運がいいんだろう!」
興奮してベラベラと喋りすぎたけど、第二王子様めちゃくちゃかっこいい。
落ち着いていて、それでいて堂々とした佇まい。毛並み(髪の毛)もちゃんと手入れされててサラサラで艶がある。
前世でふてぶてしい野良猫が近所にいたけど、そいつによく似てる。
思わず髪を触っても、彼はジロリと睨んできただけで抵抗はしなかった。
若干頬が赤くなっているような……あ、もしかして照れてる?