第3章 とある竜の君の一日
「なんだコレは?」
「私が作ったお菓子さ。口直しにでも食べてくれたまえ。ムシュー好奇心の作る菓子は……その……と、とても個性的なんだけれど……わ、私は食べた後の……記憶が飛んでいてね……う、うん……なんていうか……とても不思議な体験をしたよ」
察した。
リリアがちょっかいかけると言っていたのはルークに手作り菓子を食べさせることだったのか。
いや、彼としてはルークと楽しくお茶会を開いて少し話をするつもりだったのだろう。
なんにせよ、ベラベラとよく回る舌を持つこの男をここまで言い淀ませるとは……恐るべし、リリア。
「あ、もちろんキミの分も作っておいたから時間がある時に食べてくれたまえ」
「僕の分もあるのか?」
「ビヤンシュール!なんだか最近眠れていないようだから安眠効果のあるお菓子を作ったんだ。籠の中を見てごらん。小さな箱があるだろう?それがキミの分だよ」
袋に包まれた大量のお菓子をかき分けて埋もれていた箱を取り出す。
ゆっくりと箱を開けると、マンゴームースとバナナスムージーが入っていた。
バッと顔を上げればルークと目が合って、彼は得意げにウィンクしてみせた。